子供のころ、僕の家には質の悪い紙しかなかった。強く書き込めば穴が開くし、消しゴムで擦ればすぐ破れてしまうような柔らかい紙だった。僕はそんな紙にいろいろな絵を描いたり、漢字の練習をしていた。その頃の東京は長く続く雨の影響でインフラなども全部…
鏡を見ると俺は実に嫌な顔をしている。まさに下卑た無知そのもので、まだ見たこともない嫌いな誰かにそっくりだ。顔を洗って歯を磨いて、一応その顔と決別する。ヒゲを剃って顔に化粧水を塗って。俺が俺の嫌いな人間にそのまま成り下がらないよう誤魔化すた…
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