ガラスの大地

詩や日記を書きます

S・Z

 

 

心臓がふたつあればよかった

鼓動が重なれば時をとめる必要がないから

低音を響かせる空からくるあなたを、うけとめられると思ったから

 

 

歯が痛い

鱗を剝がしたい

肉をそぎ落として、骨を切り出して、あなたの心の在りかを探したい

どうにでもできると僕は思った

それが責務であり使命でもあるって母さんが言った

僕はそれを信じなかったけど、父さんも姉さんも兄さんもそうだって言うから、一人で僕は海に出た

 

 

まだ歯が痛い

きっと死ぬまでこうなのだと思うとどうにもいたたまれなく

船の上で家族に土下座をして

数年がたち

僕は真っ裸で海の底まで落ちて

そのまま今に至る

血は灰色で、鱗は白い

かつて美しい深緑色だった肉はほとんどなくなってしまって

骨は叩くと折れてしまうくらいだった

それでもまだ歯は痛い

いつになればと思ったが、そのまま眠った

 

 

心臓がふたつあればと思った

そうすればこの痛みも消えてくれると信じたい

誰がための祈りはいずこへか消え

心だけが置き去りになって

だれも僕に焚べてはくれないだろう

それでいい

1人で死ぬのは、心地いいんだ

きっとそうなんだ