ガラスの大地

詩や日記を書きます

可解

 

 

 

車窓から覗く大きな月を眺めていると、僕らの辛さはますます大きくなる気がした。思い出と呼ぶには甚だ不愉快な記憶たちは、事あるごとに僕を責めたてる。その辛さを思い出す度、僕は喉元まで迫り上がった叫びを飲み込む。母が言っていた。現世の辛苦は前世に罪を重ねたからなのだと。そう思えば思うほど今僕の心にある出所不明の痛みが、とてつもなく理不尽なように思えてくるのだった。僕は好きに生きて理不尽に死ぬ。人としてあるべき姿のまま死ぬ。誰にも邪魔されない権利。前世の僕にだってそれは止められない、否定しようのない事実なのだ。あなたを、僕自身を、傷つけることは権利の一つだ。それを許すことも許さないことも。

だからどうか、僕の前に現れないでくれ。拒絶しようのない現実だけで僕たちには十分だ。それを見て見ぬふりをさせてくれ。逃げられるのなら、どこまでだって逃げていい。誰かの人生を背負う必要はない。頑張って生きる必要もない。僕らは好きに生きている。そして理不尽に死ぬのだから。